「何回言ったらわかるの?」

「早くご飯食べて」

「歯磨きした?」

「着替えた?」

「ドリルやった?」

小学生の子育てをしていると、気づけば一日中、子どもに何かを言っていることがあります。

それでも動かない。

朝の支度は進まない。
タブレットを見続けている。
ご飯は好きなものだけ食べる。
帰宅しても自分から勉強を始めない。

そして、こちらもだんだん余裕がなくなってくる。

強く言えば、

「もう、やだ!」

とソファに倒れ込む。

そんな日が続くと、

「育て方を間違えたのかな」

と思ってしまうこともあるかもしれません。

私自身、子どもを育てる父親です。

そして横浜市都筑区・北山田で民間学童を運営し、毎日小学生を見ています。

家庭でも学童でも感じるのは、

子育てで必要なのは、「もっと言うこと」ではなく、「言わなくても動きやすい環境を作ること」なのではないか

ということです。

小1が自分から動かないのは、それほど珍しいことではない

大人から見ると、

「8時に家を出るんだから、その前に着替えればいい」

と思います。

でも、そのためには、

時間を見る。
今やっていることをやめる。
次に何をするか思い出す。
嫌でも行動を始める。
出発時刻から逆算する。

いくつもの力が必要です。

こうした「注意を切り替える」「順番を考える」「衝動を抑える」「計画する」といった力は、子どもの成長とともに長い時間をかけて発達していきます。

ハーバード大学のCenter on the Developing Childでも、こうした自己調整や計画に関わる力は、生まれたときから完成しているものではなく、周囲との関わりや練習を通して育っていくと説明されています。

つまり、

「言わないと歯磨きをしない」

「自分からドリルを始めない」

という一場面だけで、小1の子育てが失敗しているとは考えなくていいと思います。

まだ「自分で生活を回す練習をしている途中」と考えた方が自然です。

ただし「何度も言えばできるようになる」とも限らない

ここが難しいところです。

子どもが動かない。

だから、

「ご飯食べて」

と言う。

動かない。

「早く食べなさい」

と言う。

まだ動かない。

「何回言ったらわかるの!」

となる。

最初は一回だった声かけが、いつの間にか五回、十回になっていきます。

親は疲れます。

そして子ども側にも、

「言われたら動く」

という流れができていきます。

だから、小1の子育てでは「声をかけない」ことを目標にするのではなく、

親の声だけに頼らなくても生活できるようにする

ことが大切だと考えています。

「早くして」を減らすなら、言葉ではなく仕組みにする

例えば朝です。

毎朝、

「ご飯食べて」

「歯磨きして」

「着替えて」

「ランドセル持った?」

と伝えているなら、それを一度、見える形にしてみます。

朝ごはん
↓
歯磨き
↓
着替え
↓
持ち物確認
↓
8時に出発

これだけでも違います。

子どもが止まっていたら、

「早くしなさい」

ではなく、

「次は何だっけ?」

で済むようになります。

さらに慣れてきたら、その声かけも減らしていく。

ハーバード大学が紹介している家庭での生活習慣に関する取り組みでも、毎日の流れを一定にすることは、子どもが「次に何が起こるか」を理解し、自分で行動する練習につながるとされています。また、一定の生活習慣は養育者側の負担軽減にもつながるとされています。

親が頑張って指示を出し続けるのではなく、生活そのものをわかりやすくする。

これはクラフトマンでも大切にしている考え方です。

タブレットをやめないなら「親対子ども」にしない

「ご飯だからタブレットやめて」

と言っても動かない。

これは家庭でとても起こりやすい場面だと思います。

このとき、

「ママがやめろと言ったから終わり」

にしてしまうと、毎日親子の交渉になります。

それよりも、

「18時になったら終了」

「食事中はタブレットを使わない」

という家庭のルールにしてしまう。

必要なら、

「あと10分」

「あと5分」

と知らせます。

時間になったら終了。

親の機嫌によってルールが変わらないようにします。

すると少しずつ、

「怒られたからやめる」

から、

「時間だから終わる」

へ変わっていきます。

ドリルを自分からやらない=やる気がない、ではない

小1の子育てについて話していると、

「自分から勉強してほしい」

という相談もよくあります。

もちろん、その気持ちはよくわかります。

ただ、小学1年生が毎日、

「今日もドリルやりたい」

と思う必要はありません。

クラフトマンでも習い事・プログラムの時間に「参加したくなーい!」と言う子もいます。

大人だって、毎日やるべきことを全部「やりたい」と思っているわけではないからです。

大事なのは、

「言われたから仕方なくやる」

だけにならないことです。

例えば、

「ドリルやりなさい」

ではなく、

「今日のドリルは、おやつの前と後、どっちでやる?」「今日の英語はどれくらいなら参加できる?」

と聞く。

ドリルをすること自体は決まっている。

でも、いつやるかは自分で選べる。

参加することは決まっている。

でも、時間を自分で選ばせる。

自己決定に関する研究では、子どもに何でも自由にさせるのではなく、必要な枠組みを示しながら、理由を説明したり、方法について選択の余地を持たせたりする関わりが、子どもの自律的な行動や動機づけと関連することが報告されています。

「自由」と「放任」は違います。

同じように、

「ルール」と「命令」も違います。

クラフトマンでも、この間をどう作るかを大切にしています。

父親が気をつけたい。「正しいこと」を妻に説明しすぎない

ここからは父親に向けて書きたいと思います。

家庭で子育ての悩みを聞いたとき、ついやってしまうことがあります。

分析です。

「こうした方がいいんじゃない?」

「怒るから余計に反発するんじゃない?」

「言いすぎなんじゃない?」

確かに内容としては間違っていないこともあります。

でも、毎朝子どもを起こし、ご飯を食べさせ、支度させ、時間を見ながら動いている人に、

「言い方を変えた方がいい」

と伝えても、その人の負担は減りません。

むしろ、

「私のやり方まで否定された」

と感じることもあります。

だから父親として考えたいのは、

妻をどう直すかではなく、妻が声をかけなくても済む状況をどう作るか

だと思っています。

例えば、

朝の支度表を父親が作る。

タブレットの終了時刻を夫婦で決める。

ドリルを見る時間を父親が担当する。

夜の歯磨きを父親の担当にする。

「怒らないで」と言うより、一日の中から一つでも「怒らなくて済む場面」を減らした方が、家庭は変わりやすいと思います。

親だって、いつも冷静ではいられない

子どもが、

「もうやだ!」

と言う。

親も、

「もう知らない!」

と言いたくなる。

人間なので、そういう日はあります。

もちろん、親の言葉や振る舞いを子どもが取り入れることはあります。

ただ、一つの言葉だけを見て、

「親の真似をしている」

と決めつける必要もありません。

大切なのは、失敗しないことよりも、その後です。

「さっきはイライラして言いすぎた」

「もう知らないって言ったけど、本当に知らないわけじゃないよ」

「もう一回やり直そう」

親自身がこうやって戻る姿を見ることも、子どもにとって一つの経験になります。

子どもに気持ちを切り替えてほしいなら、大人も気持ちを切り替えるところを見せる。

完璧な親である必要はありません。

クラフトマンでも「言われないと動けない」を減らしたい

横浜・北山田のクラフトマンアフタースクールでも、子どもたちに何度も同じことを言う場面は当然あります。

「片付けよう」

「宿題やろう」

「集まろう」

それでも動かないことがあります。

だからこそ私たちは、

「もっと強く言えばいい」

とは考えません。

なぜ動けなかったのか。

聞こえていなかったのか。

今していることから切り替えられなかったのか。

何をすればいいかわからなかったのか。

そもそも仕組みがわかりにくかったのか。

そこを考えます。

大人が毎回指示しなければ動けない環境を作っておいて、

「この子は自主性がない」

と評価するのは少し違うと思うからです。

これは家庭でも同じではないでしょうか。

まとめ|小1の子育てで変えるのは、子どもだけではない

小1の子どもが、

時間どおりに動かない。

好きなことをやめない。

自分から勉強しない。

何度言っても支度しない。

こうしたことが続けば、親が疲れるのは当然です。

そして疲れれば、声も強くなります。

だから、

「もっと優しく言おう」

「怒らないようにしよう」

だけでは続きません。

小1の子育てで考えたいのは、

どうすれば、親が何度も言わなくても生活が回るのか。

朝の流れを見えるようにする。

タブレットのルールを決める。

子ども自身に小さな選択を任せる。

夫婦で一つずつ担当を持つ。

全部変えなくていいと思います。

まず一つ。

我が家なら、朝。

別の家庭なら、宿題かもしれません。

子どもの行動を変えようとする前に、家の中から「早くして」と言わなくても済む場所を一つ作ってみる。

その積み重ねが、子どもが自分で動けるようになるための練習になるのではないかと思っています。

そして同時に、

親が子育てを少し楽に続けるための方法でもあると思います。


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