先日、何気なくテレビを見ていると、NスタでApple Storeで働くスタッフが紹介されていました。

その中に、見覚えのある人がいました。

私がAppleで働いていた頃の元同僚です。

彼は目が見えません。

Appleに入社してきた当時、販売経験はほとんどなかったと記憶しています。

それでもApple Storeの店頭に立ち、お客様と話し、製品を案内する仕事に挑戦していました。

私は当時、トレーニングを担当する立場にいて、彼が店頭に立つためのトレーニングにも関わりました。

あれから十数年。

テレビの中で今も働いている姿を見て、昔の出来事をいくつも思い出しました。

そして改めて考えたことがあります。

人を尊重するとは、何なのだろう。

これは今、クラフトマンアフタースクールで子どもたちと接するときにも、私がとても大切にしている考え方です。

「できないから助ける」は、本当に尊重なのか

「相手を尊重しましょう」

教育でも、子育てでも、仕事でもよく聞く言葉です。

でも、実際に相手を尊重するのは簡単ではありません。

たとえば、目の前の人にできないことがあったとします。

大人なら、つい代わりにやってあげたくなります。

子どもであればなおさらです。

靴がうまく履けなければ履かせる。

宿題が分からなければ答えを教える。

準備が遅ければ親が荷物をまとめる。

失敗しそうなら、その前に止める。

もちろん、助けることが必要な場面はあります。

ただ、

「できないから代わりにやる」という行動が、本当にその人を尊重しているのか。

私はAppleで働いていた頃、このことを考えさせられる経験を何度もしました。

目の見えないお客様が、驚くほど速くiPhoneを操作していた

まだ私がAppleに入社して半年ほどだった頃です。

iPhoneの契約を担当したお客様の中に、目の見えない方がいました。

当時の携帯電話の契約は書類も多く、内容を確認してもらったり、説明を読んでもらったりする場面がたくさんありました。

視覚を使うことを前提にした手続きが多かったのです。

その方は、iPhoneの読み上げ機能を使っていました。

片耳にイヤホンを入れ、画面に表示されている内容を音声で確認しながら、指でiPhoneを操作していきます。

横から見ている私には、ほとんど何も表示されていないような画面を、指が高速で動いているようにしか見えません。

読み上げる音声も、私には聞き取れないほど速かった記憶があります。

そして何より驚いたのが、その方の処理の速さでした。

文章を確認する。

内容を理解する。

必要な操作をする。

その一つひとつが速い。

通常であればかなり時間のかかる契約手続きが、想像していた以上の速さで進んでいきました。

「目が見えないなら、手続きには時間がかかるのではないか」

当時の私は、無意識にそう考えていたのだと思います。

でも、実際はまったく違いました。

その方は、その方なりの方法を身につけ、それを驚くほど使いこなしていました。

そのとき私は、

人は、見えているものや普段のやり方だけを基準に、他人のできることを決めてはいけないのだ

と強く感じました。

「ハンディキャップ」をどう捉えるのか

この経験から私は、「ハンディキャップ」というものをどう捉えるかについて少し考え方が変わりました。

目が見えないことで、不便なことは当然あります。

移動にも難しさがありますし、社会の仕組みそのものが、目が見えることを前提につくられている場面もたくさんあります。

だから、不便さや困難そのものがなくなるわけではありません。

ただ、

目が見えないということと、能力が低いということはまったく別です。

できないことがある一方で、その人なりの方法を身につけることで、私よりずっと速くできることもある。

私があの日見たのは、まさにそれでした。

Appleには、VoiceOverをはじめ、視覚、聴覚、身体の動かし方などに応じて使えるアクセシビリティ機能が製品そのものに組み込まれています。

何か特別な人だけが使う別の製品ではありません。

同じiPhoneやMacの中に、最初から別の使い方が用意されています。

私はこの考え方が、とてもAppleらしいと思っています。

「できない人のために別のものを用意する」というより、

同じところにたどり着くための方法を、一つに決めない。

そんな考え方です。

目の見えないスタッフをトレーニングしたとき

それから数年後、冒頭に書いた元同僚がAppleに入社してきました。

彼は目が見えません。

私は当時、トレーニングリードとして彼を担当しており、彼がお客様対応をするための研修にも関わりました。

私にとっても、目の見えないスタッフをトレーニングするのは初めてでした。

当然、通常の研修をそのまま行えばよいわけではありません。

資料の伝え方。

店内での動き方。

製品を案内するときの方法。

一部は、彼に合う形に変える必要がありました。

ただ、一つだけ決めていたことがあります。

目が見えないことを理由に、顧客の質を下げないことでした。

これは「何の配慮もしない」という意味ではありません。

方法は変える。

必要な支援もする。

でも、ゴールまで下げる必要はない。

「目が見えないからできません」で終わるのではなく、

「では、どうすればできるのか」

を一緒に考える。

目が見えるスタッフであっても、良い接客ができるとは限りません。

反対に、目が見えなくても、お客様に良い体験を提供することはできます。

大事なのはそこでした。

私が「代わりに操作すること」を断った理由

Apple Storeの修理フロアGenius Bar(現在はGenius Groveに切り替わっている店舗もあります)で働いていた頃にも、忘れられない出来事があります。

病気によって途中から目が見えなくなったお客様が来店されました。

その方からMacの操作について相談を受け、私はアクセシビリティ機能を使ってMacを操作する方法を案内しました。

ところが、その方から、

「目が見えないから、代わりにマウスとトラックパッドを操作してほしい」

と言われました。

私は、それを断りました。

文章だけを見ると、冷たい対応に聞こえるかもしれません。

もちろん、何もしなかったわけではありません。

操作する方法を伝える。

読み上げ機能の使い方を説明する。

必要なところは一緒に確認する。

そこは手伝います。

でも、私が代わりに操作をして終わらせてしまえば、その場の問題は解決しても、その方は次も誰かに操作してもらう必要があります。

それは本当にサポートなのだろうか。

そのとき私はそう考えました。

私がやるのではなく、その人自身が使える方法を伝える。

時間がかかったとしても、そちらの方が大切なのではないか。

今でもそう思っています。

子育てでも、同じことが起きている

今、私は横浜市都筑区・北山田で民間学童を運営しています。

子どもたちと毎日過ごしていると、Appleで経験したことを思い出す場面があります。

「できない」

「分からない」

「やって」

子どもたちはよく言います。

そこで大人が全部やってしまえば、その場は早く終わります。

忙しい時間ほど、その方が楽です。

でも、クラフトマンでは、

「どうしたらできそう?」

「どこまでなら自分でできる?」

と考えます。

これは放任とは違います。

困っている子を放っておくわけでもありません。

必要な情報を渡す。

やり方を見せる。

難しければ少し手伝う。

選択肢を出す。

そして、できる部分は本人に任せる。

私がAppleで学んだ「尊重」は、こういうものでした。

「自分でできる」を奪わない

子育てをしていると、大人には子どもの先が見えます。

「それをやったら失敗する」

「こうすれば早い」

「こっちが正解」

経験がある分、分かってしまいます。

だから、先回りしたくなります。

でも、その先回りによって、子どもが自分で考える機会まで奪ってしまうことがあります。

親や先生が全部正解を教えてしまえば、失敗は減ります。

時間も短くなります。

でも同時に、

「自分で考えて、やってみて、できた」

という経験も減っていきます。

心理学には「自律性支援」と呼ばれる考え方があります。

これは、子どもを好き勝手にさせるという意味ではありません。

子どもの考えを聞く。

なぜ必要なのかを説明する。

できる範囲で選択肢を持たせる。

自分なりの方法で取り組める余地を残す。

そうした関わり方です。

子どもの自立を支えるうえで大切なのは、

助けないことではありません。

自分でできるようになるために助けることです。

クラフトマンが考える「子どもの自立を支える」

クラフトマンアフタースクールでは、子どもを一人の人として扱いたいと考えています。

年齢が小さいから。

まだできないから。

失敗するから。

それだけを理由に、大人がすべてを決めることはしたくありません。

一方で、「自分で考えて」と丸投げすることもしません。

必要なところには大人が入ります。

危険なことは止めます。

知らないことは教えます。

できない方法しか知らないのであれば、別の方法を一緒に探します。

でも、その子自身ができることまで、大人が奪わない。

Apple Storeで、目の見えないお客様やスタッフと過ごした時間から、私はこのことを何度も教えられました。

まとめ|尊重とは、相手の可能性を勝手に決めないこと

テレビに映る昔の同僚を見ながら、十数年前のことを思い出していました。

当時、販売経験もほとんどなかった彼がApple Storeの店頭に立つこと。

毎日、自分で通勤すること。

お客様の前に立ち、製品を案内すること。

目が見える私には、その難しさを完全に理解することはできません。

それでも、一つだけ思うことがあります。

周囲が最初から、

「目が見えないからこれは無理だろう」

と決めていたら、違う未来になっていたかもしれません。

これは子どもも同じだと思います。

「まだ一年生だから」

「この子には難しいから」

「時間がかかるから」

大人は、善意で子どもの代わりをしてしまいます。

でも、尊重するということは、何でもやってあげることではない。

その人が自分でできる方法を一緒に探すこと。

そして、その人自身がやる機会を残しておくこと。

私はそう考えています。

子どもの自立を支えるために必要なのは、手を出さないことではありません。

どこまで手を出し、どこから本人に任せるのかを、大人が考え続けることなのだと思います。

まずは見学・体験から

教室の雰囲気は、来ていただくのが一番伝わります。平日14:00から見学・体験を受け付けています(事前予約制)。

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